『はじめてのちゅう』


(うわあ、どうしよう。ちゅーしちゃったよ。)
最初の感想はそれだった。
熱っぽくてやわらかいそれを唇に感じながらツナはプチパニック状態に陥った。
(なんかくるしいよ、もっとあまずっぱくてときめくもんじゃないんだっけ、マンガではそうだったよな、ときめくどころかなんか心臓ばくばくいっちゃってるんだけど。しかもタバコとお酒のにおいがしてるよ。
ってその前にオレたち二人とも男じゃん!)
いつも、かっこいいなオレもこうだったらな、と思っていた顔がすぐ目の前にある。
(まつげ、銀色なんだ。目を閉じた顔、初めてみた。)
ようやく、心臓がふだんのリズムに戻ってきたころ。
何だかほっぺたがこそばゆいことに気がついた。
ツナの、ほっぺたにふれてる指さきが、かたかたと震えてる。
(ああ、そうか。)
獄寺くんも、キスするの初めてなんだ。
死にそうにどきどきしてるの、オレだけじゃないんだ。
そうわかって。
目を閉じてどうしようかと固まっていた両手を、獄寺の首にまわした。
逆に獄寺は驚いて目を見開き、それからおずおずと両腕をツナの肩と腰にまわして引き寄せた。
お互いに息継ぎの仕方さえわからなくて、時々、ぷはっと音をさせて唇をはなして、またくっつける。
すごく不器用に初めてのキスをした。
そんなある日の出来事。