『こいいちご』


「おいしい?」
「じ、10代目?!」

唇に、さしこまれたそれを、驚いてもごもごと嚼むと。
口の中に広がるイチゴのフレーバー。
「な、何ですかいきなり」
「え?違った?さっきからずっとオレの手もと見てるからてっきり欲しいのかと」

だからといっていきなりチョコを・・・ていうよりオレが見てたのは10代目の手であって小さい手だなーよくこんなんであんな死ぬ気の力出せるぜさすが10代目指さきなんかも細くって・・・なんて考えてたのに10代目が手づからチョコを・・・って指さき、唇にさわった!?
キューブ型のチョコレートはすっかり溶けて、かわりに目の奥が、つん、とした。

「10代目」
「な、何?」
「よくわからなかったのでもう1回お願いします!」
「う、うん」
獄寺に気圧されるように、ぴりっと包装をやぶいて再びツナの指で差しこまれるチョコレート。
指さきが心もち唇に触れて。
舌をからめて吸いたくなる衝動を押さえて。
「もう、1回」
甘酸っぱくてほろ苦い、チョコレートのフレーバー。
もう1回、もう1回とくり返される甘い時間。

ぽた。
「・・・?」
「うわ!獄寺くん!鼻血!」
鼻から流れる水っぽいものを拭ってみた手が赤かった。
ティッシュティッシュ!と慌ててティッシュの箱をたぐりよせながら、ツナはあきれたように笑った。
「そんなにおいしかった?」
でも10コは食べ過ぎだよー。
そう笑いながら手渡してくれたティッシュを鼻につめながら。
「そうっすね・・・」
ちょっと、カッコ悪すぎだかなと獄寺はうなだれた。
・・・でも、本当に、あなたの指さきが甘くておいしくて。
やめられなかったんです。