『あたらしいとしに』


何となくカウントダウンの番組なんてみていた、その時。
電話が鳴った。
みんな起きちゃう、とあわてて受話器をとった。

「はい、沢田です」
「もしもし、10代目ですか?」
「獄寺くん?どうしたの?」
「夜分遅くにすいません。ちょうどは混むらしいんでちょっと早めにかけました」
「え?何で?」
「一番先に、新年のご挨拶にと思いまして。ご迷惑でしたか?」

時計を見ると11:59。

「ううん、全然。そっかー、今年もあと1分だ。いろいろあったねー」
「ええ。」
何度も死ぬような目にあったりしたけど。
でも楽しかった1年だったと思う。
1年前のあの頃は、まさか獄寺くんと、恋人同士になるなんて思いもよらなかったけど、たくさんたくさん、甘い時間も貰った。
「10代目、あけましておめでとうございます。新しい年です。」

かすかに、遠くのお寺から響いてくる鐘の音。

「あけましておめでとうございます。今年もよろしく」
「10代目、今年だけじゃないです。」
「え?」
「これからも、ずっとよろしくお願いします。」

「ずっと?」
「ええ、ずっと。」

電話ごしなのに、心臓のあたりが、とくん、と甘く脈うった。


「あなたの、そばに。」

そんな、1年の始まり。