『たばこのけむり』


身体中が筋肉痛で、ぎしぎしする。
小言弾よりはましだけど。
なんて考えながら、すっかり慣れてしまった自分がちょっとこわい。
でも、芯がまだとろとろとけてるみたい。
うつぶせたまま、ぼんやり見えるその先に。
たちのぼるタバコの煙。

「10代目、起きました?」
激しくしすぎたみたいですみません、て、ちょっと顔を赤くして謝るきみ。
「ううん。オレ、寝ちゃってたみたい」

そんな謝ることじゃないよ、ってこっちまで顔を赤くしながら。
ていうか絶対言えない、あんまりよすぎて気を失っちゃったなんて。

「あ、すみません」
オレの視線に気づいたのか。
起き上がって、ぎゅ、とベッドサイトの灰皿にタバコを押し付けようとする。
いつの頃からか、獄寺くんはオレといる時にタバコを消すようになった。

「いいの。消さないで」
手をのばして。
獄寺くんのその手を押さえて。
「でも、けむいでしょう?それに喉にあんまりよくないですから」
さっきあんなに、ないてましたし、なんて余計なこと言い出すから。
「獄寺くんの匂いだから、好きなんだ」
慌てて言った。
「好き、なんですか?」

「うん、好き」

タバコをもみ消して、ゆっくりと覆いかぶさってくる獄寺くんの身体。
また、脚に押し付けられる熱い塊。

ん、とこっちも押し付けるように重ねられた唇に。
首と肩に腕を回しながら。
また、二人で、まるで遭難でもしたみたいにぴったりと寄りそいあう。
シーツも身体も、もみくちゃになる。

唇と指から。
鼻の奥がつん、とするタバコの匂い。
くらくら、させられるから好き。

きみを形作るひとつだから好き。