『あいはんするもの』


恋心は、相反するもので出来ていると、思う。
その人を大切にしたい、これは本心。
でも、その人を泣かせてみたくなる、これも本心。

一枚一枚、丁寧に服を剥いでいく。
「リラックス、してください」
最初は出来るだけ怖がらせないように、とっておきの笑顔を。
つられて、ほころびかけた唇を塞ぐ。
耳に舌を這わせながら、空いた手では細い脚を撫で上げる。
んん、と喉を震わせる声。
そう、もっと可愛い声を聞かせてほしい。

当たり前だが、10代目にとってはオレが最初の相手なわけで。
オレが一番最初にこんな顔を知ったということが妙に興奮する。
誰が言った言葉だったか、女は男の最後の女になりたいと願い、男は女の最初の男でありたいと願う。
もっとも、今オレが組み敷いているのは、恐れ多くもオレの将来の、そして現在もお仕えするべきボスであったりする。
この、妙な背徳感。

「舐めますか?」

お互い、すっかり身にまとう服がなくなり、興奮しきったオレ自身が晒されると。
ちらり、とそれに目を走らせて、うつむいて。
目元を赤くしたままこくり、と頷いて、そっと両手で包んで唇を寄せてくる。

懸命に、先端で円を描くように舐めたり、筋にそって下から舐め上げたり。
滲みでる体液が苦いのか、少し眉をよせてみたり。
初々しさの残るそれら全てが、更にオレを煽って、ずくり、とそこが大きくなる。
でも、まだ刺激が足りない。

「口、開けてください」
「・・・んむっ」

素直に、開いた口の奥にそれを頬張らせると、目を見開いてもがく。
頭を押さえ付けるようにして、腰を前後に動かし、出し入れすると、おずおずと動きに従う。

「そう、口で出し入れして・・・」

時折、噎せるそれがまた刺激になって、上りつめていく。
前髪のあたりを撫でてさしあげると、少しだけ安らいだ表情になって口での動きが滑らかになっていく。


少しずつ、少しずつ、時間をかけて育ててさしあげますよ、10代目。
貴方の中の欲も、オレを欲しいを思う気持ちも。

すっかりとろけて、準備ができた10代目をうつぶせにして、腰を高くあげさせる。
ゆっくりと、擦り付けるように入ると、より甘い声が上がった。
薄い背中に、額を寄せて唇で触れる。
苦しいですか?
問いかけに、ふるふると首をふる。
こんなことをするオレは部下失格かもしれませんね。
それでも、オレが、心の底から大切にしたいと思うのも、こうして抱きたいと思うのも、貴方一人だけ。