『無題2』



薄型のモニタから流れてくるのは、自分とは無関係の事件。
照明を落とした中に、唯一の光源であるTV。
それにしてもキャスターもコメンテーターもさっきから一つのキーワードばかりをくり返す。
”なぜ””何故こんな事件が?””ナゼ”なぜなぜなぜ・・・

「・・・なぜ、ね。原因がわかったところで再発を防止できるかはまた別問題だろうに。」
「まったくです。好奇心に一枚皮を被せただけの勘ぐりです。意味がない。」
「・・・起きてたのか」
行為の後、キングサイズのベッドで眠り込んでいると思った男は起きていたらしい。
「意外だな。もっと真相解明に興味を持ちそうなものなのに。」
ベッドの縁に腰掛けている後ろから伸ばされてくる指。
しつこいそれを払い除けつつ。
気を別の方向に反らそうと言うと。
「彼女は自分の世界を守ろうとした。彼女のルールに則って。しかしそれの為に犯した罪によって、この世界のルールによって裁かれねばならない。わかっていなかったとしても罪は罪、それだけです。」
「ルールか、確かにその通りだけど。」
「私たちが追っている件も同じですよ。キラも身勝手で傲慢な自分の価値観を押し付けようとしている。しかも理解していて罪を犯しているのでしょう?」
不意に。
肩に顎が乗せられた感触がしたので振り向くと。
間近でこちらを見つめてくる彼の視線とかち合う。
ほとんど瞬きもせず。
感情も表すことが少ないその目はこちらの一挙手一投足を逃すものかとしているようだ。
お前がキラではないのか?半ば確信しているようなその目。
「さあ?僕はキラじゃないから、奴が何を考えているのかわからないよ」
困ったように柔らかく微笑みつつ。
それより、さっきから腰のあたりで不埒な動きをしているこの手を・・・と抗議しようとした口は塞がれた。
更に意志をもって胸を、脚を這い回る手。
気がそれた瞬間に、ベッドに引込まれるように押し倒された。
翻弄されつつも、今だけは仕方ないかと諦めて彼が傍若無人に身体を探るのに任せた。
これ以上、キラや心理状況の話題に触れても碌なことになりそうもなかった。
噛むくせがあるために、とげとげになった右手の親指の爪が時折敏感なところを掠めていって。
偶然にも心臓付近を掠めたそれに粟立つ感覚を覚えながら。
目を閉じた。
まだ、戦いは始まったばかりだ。
最後に、メギドの丘にたつのは、Lか、自分か、それとも・・・。