『苦いミルク〜諸葛兄弟Ver.〜』



月明かりの下。
蠢く影は2つ。

一人は寝台の上で。
それより小柄なもう一人はその足元に跪き、寝台に腰掛けた人物の両脚をそっと押し開いてその中央に顔を寄せ、口と手で仕えている。

「・・・んっ・・・」
微かに漏れる声は湿って熱を帯び、部屋の中の温度さえ上げていくように思えた。
その小さな口に、そそり立つ茎は大きすぎるらしく、すべてを口腔におさめるのをあきらめ、先端のみ舌で円を描くように舐める。
そして時折入り口を舌で押し開くようにしたり、かと思えば唇に括れを引っ掛けるように刺激してくる。
その間にも指は休みなく育った茎に絡められて扱く動きを続ける。

・・・ちゅ、・・・ぴちゃ・・・
濡れた音が響く。

「お、陸・・・いい加減に・・・」
柔らかな黒髪に指を絡めて押し返し行為を止めさせようとするも。
「・・・気持ち、いい、かい?瑾・・・」
潤んだ上目遣いで見上げるその顔は、確信犯としか思えない。
傍から見れば、奉仕されているように見えるが、その実、追いつめられているのは自分。
指先と舌の巧みな動き。
陸遜の年齢や見た目より、はるかに熟した技巧は仕込まれたものであることは明白だった。
彼にこれを仕込んだ人物などわかりきっている。
その陸遜が心底敬愛する師・孔明と通常の師弟以上の愛情と関係がそこにあることも、この愛撫を施される以前から何となく察しはついていた。
なのに、これは一体何だ。
何故、彼は、陸遜は孔明ではなく、自分にこんなことをする?
まるで、喰われているようだ、と悦楽に麻痺した頭をふる。
白い額に浮いた汗がその反動で流れ落ちる。

されるままに絶頂を迎え、弛緩したまま、諸葛瑾は絞り出すようにして問いかけた。

「・・・はっ、孔明、これがアンタの望みかい?」

部屋の壁にもたれ、一部始終を見届けた白を纏ったその人物は、衣擦れの音をさせながら近付いてくる。

「陸遜、もう十分でしょう。」

その顔に浮かぶのは、慈愛の笑み。
愛弟子をいたわり、その労を褒めたたえる師そのもの。
こんな時も、この男は超然とした態度を崩さないのか。
諸葛瑾は小憎らしく思った。

「はい、孔明様。」

孔明に優しく髪を撫でられ。
諸葛瑾の吐精したものを、すべてその口で受けて飲み下し、今も唇と舌で丁寧にそこを舐め清めていた陸遜は孔明を見上げ嬉しそうに微笑んだ。

「さあ、陸遜。」

心得たように師の言葉に頷き、陸遜は自分の腰に巻かれた革帯に手をかけた。
唖然と見守る諸葛瑾の前で、その下肢を被っていた衣服がすべて、床にすべり落ちる。
孔明は陸遜を抱き寄せ、その白く細い腰の奥深くに指を進める。
その指は、何時の間に用意していたのか、香油で十分に濡れ潤っていた。
「・・・んぁ、ぁっ・・・!」
さすがに異物感があるのか、陸遜が、その衣に、ぎゅ、と指で縋るのをなだめつつ。
孔明の白く、長い指は、陸遜の花弁の肉をかき分けて香油を丹念に塗り込んでいく。
諸葛瑾に口で奉仕していた間に少し兆しを見せていた陸遜の象徴は、花弁の中で蠢く孔明の指によって確かな反応を見せつつあった。
その弟子の様子を見て取った孔明は笑みを深くし、陸遜の唇にひとつ、口づけを与えると腕を解いた。
そして陸遜をそっと、諸葛瑾のほうへ押し出す。

「孔明、一体どういうつもりで・・・」
まさか、という思いで問いかける諸葛瑾に。

「兄上も、陸遜のことを可愛いとお思いでしょう?抱いてみたい、と思われたのでしょう?今宵は存分に三人で楽しもうと思ったまでです。」
至極当然といったように孔明が返答する。

「だからって、自分の愛してる弟子を他の男に抱かせるかい?第一、お陸だって・・・」
「陸遜も、それを望んでいます。」
「な・・・!?」

絶句した諸葛瑾にかまわず、陸遜を促すと、こくり、とひとつ陸遜は頷き。
裸足のまま、まだ先程の快楽が抜けきらず動けない諸葛瑾の前まできて跪くと、達したにもかかわらず、先程の陸遜の清めるための作業でまた力を取り戻しかけていた茎に触れる。
その仕草とどこか、熱で茫洋とした瞳を向けた陸遜に、下肢にまた熱が集まりはじめるのを諸葛瑾は感じた。
上気した頬。

清廉で、清純な顔の下の、陸遜のもう一つの姿。
今まで、知らなかった姿を前に。
まったく、不真面目なのはどっちなのだか諸葛瑾は、くらくらとする頭を抱えながらもかつてない情慾が沸き上がってくるのを感じた。
かつて、あなたが不真面目なのでしょう、と言ったその口で。
諸葛瑾に奉仕し更に、今また・・・。

諸葛瑾に背を向けるような格好になり、みずからの花弁にそれをあてがい、陸遜は少しずつ腰を落として行く。
孔明によって十分に解され、綻んだ花弁は、それでも諸葛瑾の茎の大きさに戸惑ったように、迎え入れつつも、きゅう、と締まった。
「く、ぅっ!」
その刺激で陸遜の中におさまりつつあった諸葛瑾のものも、いっそう質量を増すこととなってしまい、陸遜は小さく声を上げた。
それでも、ようやく根元までおさめ、少しずつ腰だけを揺らめかせ、律動を加えていく。
徐々に激しくなる動き。
快楽に身を委ねるその姿は、普段日の光のしたでみるより壮絶に美しかった。
押さえきれない嬌声が陸遜の口から漏れ出す。
掠れて、悲鳴のようでもありながら甘さを含んだ声。
それは、冷静なはずの自分をも狂わせる。
滑らかな白い双丘の狭間に、自分の欲望が飲み込まれていく。
月の光の下で見るそれは、何とも淫猥な眺めだった。

黙々と、自分の上で動く陸遜の首筋には汗で髪が張りついていた。
気持ち悪かろうと、はらってやると白いうなじが現れる。
その白さに誘われ、唇を寄せて吸い上げる。

びくり、と陸遜の花弁の奥の肉が緩やかに蠕動し、締め付けられて快感が背筋を駆け上がっていく。
自分を振り返る戸惑ったような陸遜の顔。
快楽に喘ぐ、艶めいた顔。
日の光のしたでは、清廉潔白そのもののであるのに、今は手練の娼婦でさえ適わぬ色香をまき散らす顔。
それは、孔明しか知らない顔。
そう思うと、ずくり、と諸葛瑾の下半身に更に熱が集まるのを感じた。

あ、とそれを感じ取ったのか、陸遜が声を漏らすその唇に。
たまらず、諸葛瑾は口づけた。
その口中からは、先程自分が放った苦い精の味と匂いがした。

「陸遜。」
何時の間に、気配を消して傍らに来たのか。
身をかがめ、陸遜の頬に手を添えながら孔明が呼び掛ける。
そのまま、上を向かせ自分の前をくつろげると。
陸遜は躊躇いなく、孔明のそれを口に含んだ。
そのまま、無心に舌と唇を使い、師への奉仕を始める。

淫らで、狂った夜。
きっと、すべて過ぎ去った明日の朝には、陸遜も孔明も何もなかった顔をして。
そしてこの世の汚濁など知らぬような爽やかな笑顔で挨拶をしてくるのだろう。

「兄上。」

そう、孔明に呼び掛けられて諸葛瑾は陸遜を挟んで前に立つ弟を見上げた。
さらさらと。
孔明の銀の髪が零れ落ちてくる。
月の光でそれは淡く輝き、そこからは自分と同じ髪油の香り。

頬に触れてきた指は、冷たかった。
全てを愛おしむような笑顔を浮かべ、孔明は諸葛瑾の唇に、自分のそれを重ねてきた。
ひんやりした指先とは対照的に、その触れた唇はあたたかくて。
そのギャップに目眩を覚えながら、諸葛瑾は瞳を閉じた。