First Love 〜Side-Luffy〜
2.
ゾロが手を伸ばして、おれの頭の後ろをそっと支える。
それに、ふううっとあの時の感触を思い出す。
ゾロの顔が近づいてきて唇に軽くて温かな感触が広がる。
お互い、目を見開いたままの、キス。
キスしたのは初めてだった。
もちろんそういうことの知識がまったくない訳ではなかったけど。
ゾロは何も言わない。
シャンクスのことを話してから何も言わなくなった。
頭の後ろを支えてる大きな骨張ってる手の感触。
本当にやさしく支えているだけの手。
時々血管が浮き出てるたくましい腕。
それにおれが何を思い出しているのか、目を見開いたまま、ゾロの肩越しに何を見ているのか知ってるのに。
多分、今のおれはシャンクスが昔、おれにさせたのと同じ思いをゾロにもさせてるんだろう。
だって。
一瞬、やりきれなさそうにその碧の視線が伏せられたから。
・・・コノヒトハオレヲミテクレテイナイ・・・
その間にも侵食してきた舌を吸い上げる力がだんだん強くなっていって痛くなる。
息苦しくなって「んむう!」って抗議の声をあげてゾロの肩を押し返すとやっと解放してもらえた。
「ルフィ・・・」
ゾロの声が熱く湿っている。
『初めて』だ、と言ったら信じられないという顔をしておれを見た。
シャンクスのことがあるからだろうな。
おかしいな、『初めて』をするの、ゾロでいいなんて思えるなんて。
『ダイスキ』とは違うと思うんだけど。シャンクスとは比べることもできないと思うんだけど。
でも、なぜかおれがあげられるもんで、それをゾロが喜んでくれるんだったらいいと思えるんだ。
最初に麦藁帽子をとった。
赤い上着は、自分でボタンをはずして脱いだ。
別に、ここまでは抵抗なかった。
腰と下着のすきまにゾロが親指を差し入れて、下着ごとジーンズの半ズボンをおろされた。
風呂に入ってるんじゃないのに、はだか・・・なんかきまりわるい。
ゾロに後ろから抱きしめられたまま、甲板の木の板に横たわって。
甲板の硬い感触とは別に体はほてってきた。
ゾロの手が執拗に胸をまさぐって、胸の突起を親指と人差し指でこすってくる。
これを気持ちいい、とはまだ思えない。
慣れない、変な感じ。
両足の間にゾロが無理に自分の片足を割り込ませて、閉じられないようにしてきた。
あんまりなことにびっくりして、思わず後ろを振り返ってゾロの顔を見てしまう。
なのにゾロがやさしそうに「ん?」なんて感じで笑うもんだから、何て言っていいかわからなくなっちまった。
足を閉じたくなって両足閉じたら、あたりまえだけど、ゾロの片足の膝あたりも、しめつけるような格好になった。
ぎゅーって・・・。
ちょうどうなじあたりにかかる、ゾロの息が荒くなっていく。
おれなんかでも、ゾロを興奮させられるんだ・・・女じゃないのに。
ちょっと勇気を出して、後ろ手でゾロの髪を撫でてみたりなんかした。
ぱさぱさした、でも硬くはない短い髪の毛、初めて黒いバンダナをとってその色を見たときは驚いたっけ。
そのまま、ころっと甲板にころがされて・・・ゾロの手がおれの両足にかかる。
左右に足をかかえこまれて安定しない体制になる。
そのままゆっくりとゆっくりと割り開かれていく。
自分の身体にそれが起ってるなんて・・・最中だってのに信じられない気持ち。異物感。酒に紛れてる痛み。
・・・大丈夫、まだ我慢できる・・・。
じっとおれを見ているゾロの視線。
「痛いか?」
そう聞かれて、痛みを感じてないわけじゃなかったけど、体をおこしてゾロの首筋に手をまわす。
その瞬間、やっぱり異物感と痛みは走った。
「・・・いい・・・思いきりやっちまっても・・・」
自分でもなんてこと、言ったんだろうって思う。
次の瞬間、ゾロはおれを床に押し付けると、貪るようにキスしてきた。
そのまま、激しく、ゆすられる。
痛い・・・いたい・・・ぬるついた感触がする。
「・・・・!!っ!−−−−っ!」
叫んだ。
なのにそれもゾロの口がふさいでいるからくぐもった声しかもれない。
かわりにのどの奥から金切り声に近い声が出てきた。
それさえも、くぐもって聞こえる。
じゃりじゃりと床をこする髪の毛の感触。
びたん、びたんとまるで釣り上げられた魚みたいに痛さで体が跳ねる。
閉じてしまおうとする肩をゾロが甲板に押し付ける。
痛さの条件反射なだけなのに、それにゾロが興奮してるなんてわからなくて。
だんだん、ゆすられながら繋がっている部分の感覚がなくなっていく。
こわい。今のゾロは、激しくおれの上で動いてるゾロは今まで知ってるゾロとは全然違うみたいで怖い。
貪られる。
魔獣・・・誰かゾロのことそう呼んでた。その言葉を思い出してしまった。
こわくて、やめてほしかった、なのに反対ではやめてほしくはなくて。
「や・・・やめ・・・てやめて・・・」
ようやく、首をふって深いキスから逃れて切れ切れに訴えるとゾロの動きがとまった。
どうしてそこでとまるんだよ?
自分でもむちゃくちゃなこと考えてるのわかってるけど、ただ、いたたまれなかった。
もう、痛くないのに、涙がこぼれてきた。
「・・・うっ・・・っくう・・・うぇ・・・えっ・・・」
そんなまるで子供みたいな鳴咽を上げてる間。
ゾロが、その無骨な指先でおれの前髪をかきあげてる。
何度も何度も。
額から髪をかきあげるように頭をなでてくれてる。
「・・・」
困ったような顔をして、何か言ってる。
なのに、涙がとまらない。
涙でぼやぼやとした視界に、星がにじんでく。
何が悲しいんだろう?ゾロと、セックスをしてること?相手がゾロだから?それともセックスしてること?
自分でいいって思ってしたことなのに、なんで、こんないたたまれない気持ちになるんだ?
シャンクスでも、ゾロでもいい、教えてくれよ。
わかんないことだらけだ。
「やめるか?」
って耳元で聞いてきた呟くような声。
「いいのか?」思わず言っちまった。
体からゾロが静かに抜けていった。
気づいたら毛布にも甲板の板にも朱色い染みができてた。
ちょっとだけ現実に戻って、後で洗っとかないとな、なんて思った。
おれはもう痛くはもうなくなったけど・・・。ゾロは?つらくないのか?
そう言ったら「大丈夫だ」って言って少し笑ってくれた。
毛布をふわりと2人の上にかけてくれながら・・・そっとゾロはおれを抱きよせて、おれの頭に自分の頬を押しつけてきて。
ゾロの斜めに走る大きな傷痕。
それが目に入ったけど、そのままぎゅっと目をとじて、毛布にくるまった。
そのまま、しばらく2人してじっとしてた。
それから、毛布に2人してくるまって、甲板で眠ってしまって・・・気がついたら周りは白い朝の光でいっぱいだった。
まだ、みんな寝てる時間。
ゾロも・・まだ寝てる。
そっと、服をきて、麦わら帽子をかぶる・・・そしたらなんか落ち着いた。
ゾロを起こさないように、そっと足音を忍ばせて船首のほうへ向かう。
朝って不思議だ。
また、何かが始まるような世界が生まれ変わるような気になる。この海と空の境目の中で。
今日は境界線に何が見えてくるんだろう?
こんなことならおれはワクワクするばかりで、何も怖くないのに。
おれはお気に入りの船首にのぼってみた。
朝のまだ、冷たい、気持ちいい風。
遠くに島影が見える。
あれは・・きっと昨日、ナミが言ってた島だ・・・海賊王が生れて処刑された街。
早く、みんなに知らせてやろう。
そう思ってそこから降りて、振り返ったらちょうど起きたゾロと目があった。
「陸だぞ!」
「ああ」
交わされた会話はそれだけ・・・。
まだ、まともに目が見られなかったから。
麦藁帽子を深くかぶって横を通り過ぎて、みんなを起こしにいった。
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おれがどこを見ているのかわからない、ってみんなは、言う。
何か問題があるならそれが起こったとき考えればいい、というと、楽観的なせいだって言われる。
物事に執着しない、と言う。
知ってる。ゾロも、ナミも、サンジも、ウソップも、どうして?って思ってるのは。
どうして?
たぶん、おれの心の中のおっきなかけらを10年前に、10年先にあの人が持っていってしまったんだ。
だから、その人を見つけるために前しか見られない。
おれにはそうとしか説明できないんだ。
けど、そんな理由じゃ、きっとわかってもらえないんだろう。
いつか、どこかへ行ってしまった、それを取り戻せるんだろうか?取り戻したら・・・きっと・・・。
”ワンピース”それを追っておれも、シャンクスも航海を続ける。
島影がどんどん近づいてくる。
海賊王の街。
その時、確かに何かがおこる予感がしてた。
end
後記と書いて反省
実は、これがちーちゃんの書いたいっちばん最初のゾロルだったりします。
お初ってやつですね、きゃvvv(もう、死ねという感じが・・・)
何か、ルフィ、そりゃないぜ、と言いたくなるような痛さ。(とりあえず移入するのはやめとけ、ちーちゃん。)
Side-Zoroは・・・どうしましょうかねえ?(聞くなと言われそうですね。)
多分、こっちもゾロサイドから見た全編H・・・すみません、もっと精進したら考えます。
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