雪の女王



5.

その人は目を覚まして、顔をこちらに向けました。
すると・・・それはゾロではありませんでした。
王子は首筋のところだけ、ゾロに似ていたのです。
それ以外はあまり似ていませんでした。
「いったい、何が起こったんだ?」
びっくりして、起き上がった王子が尋ねました。
黒い巻毛に黒い目、特徴のある長い鼻をした、ルフィと同じくらいの年の少年でした。

「違う・・・ゾロじゃない。誰だ。」
「なんだよ、失礼なやつだなあ。おれの名前は、ウソップだ。お前は誰だ?」
首をかしげながらも、ウソップは重ねて尋ねました。
ルフィは、へたへたと床にすわりこんでしまいました。

「おい、どうした?大丈夫か?」
困っている人を放っておけない性分なのか、うってかわって、ウソップと名乗った少年は心配そうにルフィを覗き込みました。

「カルー?どうしたの?そこにいるのは、誰?」
ビビも目を覚まして、白いユリのベッドから顔を覗かせて尋ねました。
ゾロではなかった・・・。
それは、がっかりすることなのに、なぜかルフィはうれしく思いました。
すっかりはりつめていた気がゆるんでしまったのでしょう。
ルフィは、ぽろぽろ涙をこぼしながら、今までのことや、カルーが親切にしてくれたことなどをすっかり話しました。

「それは、かわいそうに。」
と、ウソップとビビは言いました。
それからカルーに、自分達は少しも気を悪くしていないけど、こんなことは、たびたびするものではない、びっくりするから、ちゃんと昼間紹介するようにしなさい、と言いました。
そして、カルーの行動を誉めて、
「それでも、あなたはいいことをしたわね、カルー。」
とねぎらいました。

「クエー(よかった。)」
カルーは、気まずそうにうな垂れていましたが、ビビの言葉にうれしそうに鳴きました。

ルフィの疲れた様子を見て、ウソップは自分のベッドを出て、ルフィをそれに寝かせてくれました。

「人も、動物もみんな、なんて親切なんだろう。」
ルフィは久し振りに満ち足りた思いでベッドに横になりながら心に思いました。
「みんな、ガンバレって、ゾロが早く見つかるといいって応援してくれるんだ。ゾロ、おれ、きっとお前を見つけてみせるよ。」
そして、ゆっくりと眠ることができました。

翌朝。
ルフィはウソップとビビと一緒に、楽しく朝食をとりました。
気を遣わせまいと始終、面白い話をして人を笑顔にしてくれる、ウソップがどうしてビビと夫婦になったのか、とてもよくわかる気がしました。

「どうかな?直るかな?」
「こんなの、別に人に頼むまでもねえよ。・・・ほい、終了!」
「ありがとう!ウソップ!すごいなあ!」
「これくらい、どってことないぜ。」
ルフィがお礼を言うと、誉めると、得意げになりながらも照れて鼻の下をこすりました。
それに、手先が器用で、ルフィの、気に入ってるからこれをずっと履いていたい、という紐が切れかけていたゴム草履も人に頼むことなく、自分で直して、尖った石を踏んでも痛くないようにしっかり補強してくれました。

ウソップとビビは、いつまでも自分達と一緒にお城にいて、楽しく暮らそうと親切に勧めました。
けれども、ルフィはそれをお断りして、小さな馬車と、それをひく1頭の馬と、コートとこれだけ欲しいと言いました。
そうしたら、もう一度広い世の中に出て行ってゾロを探したい、と言いました。

いよいよ、出発の支度が整うと、ウソップとビビはルフィのことを手伝って馬車にのせてくれました。
そして、ゾロが見つかるように、2人が幸せになれるように祈ってくれました。

「いろいろ親切にしてくれてありがとうな。なあ、どうしてそんな、おれに親切にしてくれるんだ?」
「そりゃ・・親切ってそういうもんじゃないのか?別に人に親切にするのに理由なんていらないだろう?」
ウソップはちょっと面食らったようですが、きちんと真面目に考えて、答えてくれました。

「それにね、ルフィさん、あなたを見ているとすごく応援したくなっちゃうのよ。」
すると、ビビも横から、笑いながら言いました。
「カルー、森の入り口まで送ってあげて。」
「クエッ!」
ビビの言葉で、カルーが、森の入り口まで一緒に馬車に乗って送ってくれることになりました。

馬車の内側には甘いビスケットが詰めてあり、座席の下にも、果物やルフィが好きな食べ物やお菓子をたくさん、入れてくれました。
そして、コートだけでなく、手をあたためるように、マフもくれました。

「元気でな、ルフィ!」
「ああ。元気でな!さよなら!」
「さよなら、ルフィさん。」
3人はお別れのあいさつをしました。
こうして、早くも森の入り口まで来ました。
「クエー・・・」
「ああ、いろいろありがとう、カルー。・・さよなら。」
お互いに、悲しいお別れでした。
カルーは馬車が見えなくなるまで見送りました。
馬車は、明るいお日様のようにいつまでもいつまでも、きらきら輝いていました。





と、いうわけで王子様はウソップでした。

ちーちゃんは密かにウソビビが好きです。ノーマルカップリングでは1、2を争いますね。(血ーちゃん比)
妙に今度は説教くさい話に・・・。

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