雪の女王



6.

ルフィの乗っている馬車は、暗い森の中を通りました。
馬車はまるで松明のように光り輝きました。
その光が山賊たちの目にとまり、山賊たちが飛び出してきました。
「金の馬車だぜ!」
そして、馬をおさえ、馬乗りや御者や従者を殺して、ルフィを馬車から引きずりおろしました。

「へえ、こりゃあ、かわいい子が乗ってるじゃねえか。」
山賊たちはにやにやしながら、ルフィを上から下までなめずるように、見回しました。
ルフィはぞっとしましたが、気丈にも、山賊たちを睨み返したまま、立っていました。
「まるで、子羊ってとこだな。さて、味はどんなもんかね。」
こう言って、山賊の頭は短刀を引き抜きました。
それはぎらぎらと光って、身の毛もよだつばかりでした。
それでも、静かな目で山賊たちを睨み返していたルフィに。
次第に、山賊たちの目の光も変わってきました。

「あっ!」
その瞬間、頭は声を上げました。
どこからか飛んできた、石つぶてが手にあたって、短刀を取り落としてしまったのです。
「その子を、殺しちゃだめよ。」
山賊の頭の娘でした。
「このがきが!」
と山賊の頭は怒りました。
けれども、そのためにルフィを殺すきっかけがなくなりました。

「この子を殺しちゃ、駄目。この子は私とお話するの、そして私にマフときれいなコートをくれるの。」
山賊の娘は、まるで歌うように言いました。
この娘は頭も良く、強情で一度言い出したらあとへは引きません。
山賊の娘とルフィは、馬車に乗り込んで、切り株やイバラの茂みを飛び越えて森の奥深く入っていきました。
山賊の娘は、ルフィと同じくらいの背丈で、肩幅も同じくらいでした。
暖かなオレンジ色の肩までの髪をして、黒い瞳はどこか、悲しみをたたえていました。
娘は馬車を走らせながら言いました。

「さて、と。ここまで来れば大丈夫。
私、あんたが嫌いにならないうちは、誰にもあんたに手を出させたり、殺させたりしないわ。
言い忘れたけど、私は、ナミ。あんたって王子様?」
「まさか!」
とルフィは言いました。
そして、今までのことをすっかり、話して聞かせました。
それから、自分がどんなにゾロを思っているか、どんなにゾロに会いたいかということも話しました。

「そう、そんな広い世界が外には広がってて、あんたはそこを旅してきたのね。」
ナミは、真剣な顔つきをして、じっとルフィの話を聞いていましたが、そう、感想をもらしました。
そしてルフィをじっと見つめていましたが、ちょっとうなずいて言いました。
「私、あんたが嫌いになっても、誰にも殺させたりしないわ。
そのくらいなら私が自分でするわ。」
そして、ルフィの目をふいてやり、ルフィからもらった柔らかくて暖かいきれいなマフに手を入れました。

やがて、馬車が止まりました。
そこは、山賊の城の中庭でした。
城は上から下まで雪に蔽われていていました。
すすだらけで、雪風の吹き込む古い大広間では、暖炉の中で火が盛んに燃えていたので寒くはありませんでした。
大きな炊事釜の中では汁が煮えています。
そして、肉の塊がくしに刺されて、くるりくるりと火の上で回っていました。
「今夜は、私と動物たちと、一緒の部屋でがまんして。」 とナミは言いました。
2人は食べたり、飲んだりしてからナミの部屋に行きました。
ナミはルフィのために、部屋のすみに、藁と毛布で寝床をととのえてくれました。
上を見ますと、横木や止まり木に、ハトがいっぱい止まっています。
「これは、みんな、私のなの。伝書バトにしようと、調教中。それから・・チョッパー?どこにいるの?」
ナミはしゃべりつづけながら、あたりを見回しました。

すると、1つの小さな人影がおずおずと、ベッドの影から姿を見せました。
「おかえり、ナミ。」
「ただいま。」
それは、小さな、人ともトナカイともつかない動物でした。
大きな黒い帽子をかぶり、半ズボンをはいています。
「私の友達のチョッパーよ。トナカイだけど、人型にも変われるの。自慢の友達。チョッパー、ルフィよ。」
ナミに、友達、と紹介されてチョッパーは嬉しそうに笑いました。
そして、ちょっとびくびくしながらルフィにあいさつをしました。
「よろしく、ルフィ。」
「はじめまして。よろしくな、チョッパー!」
ルフィの笑顔に、次第に警戒心がとけたのか、チョッパーはルフィに、いろんな話を聞きたがりました。
ナミは、壁の割れ目からナイフを取り出すと寝る支度をして、ベッドに入りました。

「ナミは、寝てる間もナイフをはなさないのか?」
と、ルフィはそれを見ながら尋ねました。
「そうよ。いつだってナイフを持って寝るの。」
とナミは言いました。
「どんなことが起こるか、わからないもの。それより、もう一度さっきの、ゾロって人のこと話して。
それからこれまで、あんたが見てきたもののことも話して。」
そこで、ルフィは部屋のすみの寝床の上で、もう一度始めから話をしました。
ナミは、ルフィの話を聞きながら、すうすう寝息をたてて眠ってしまいました。
その時、ハトの一羽が言いました。

「僕たち、ゾロを見たよ。ゾロは雪の女王の橇に乗っていったよ。森の上すれすれを飛んでいったから、見えたんだ。」
「本当か!?その雪の女王ってどこへ行ったんだ?何か、知らないか?!」
とルフィは思わず大きな声を出しました。
「多分、ラプランドというところだと思うよ。あそこは、年中雪と氷に閉ざされているからね。
そこにいる、トナカイのチョッパーに聞いてごらん。」
「そうだよ、あそこは氷と雪ばかりなんだ。良い所だよ。」
と、チョッパーはハトの話を引き継ぎました。
「きらきら光る大きな谷間を自由に飛び回るんだ。そこに、雪の女王の夏の家があるんだ。
だけど、雪の女王のほんとの城は、もっとずっと北の北極に近い、スピッツベルゲンという島にあるんだぞ。」
「ああ、きっとゾロはそこにいるんだ。ゾロに会いたい。」
ルフィは思わず、ため息をつきました。

「さあ、もう静かに寝るのよ。」
と、さっきのルフィの大声で起きてしまったナミが言って、その場はそれで静かになりました。

翌朝、ルフィはハトとチョッパーの言ったことを残らず、ナミに話しました。
ナミはたいそう、真剣な顔つきをして聞いていましたが、やがてうなずいてこう言いました。
「話はわかったわ。別に、あんたをここに閉じ込めとくつもりはないから、好きにするといいわ。
で、チョッパー、あんたはラプランドという国がどこにあるか、知っているのね?」
とチョッパーに尋ねました。
「おれくらい、よく知ってるやつは多分いないぞ。」
とチョッパーは言いました。
話すにつれて、目が輝いていきました。
「そこで、おれは生れて育ったんだ。そこの雪の中を飛び回ったんだ。」

ナミはチョッパーに向かって言いました。
「ねえ、チョッパー、あんただから頼みたいの。
ルフィのことを、そのラプランドまで、走っていって、雪の女王のお城まで、連れていって。
そこに、この子の大切な人がいるんだって。あんたも、ルフィの話を聞いていたから知っているでしょう?」
「行っていいのか?」
チョッパーは驚いたように言いました。
「ええ、ちょっとした里帰りね。・・好きなだけ、過ごしていらっしゃい。そして、戻ってきたくなったらまた戻って来ればいいわ。」
「ありがとう!ナミ。」
こうして、チョッパーは生まれ故郷に里帰りする傍ら、ルフィを雪の女王の城まで送ることになりました。

ナミはルフィをトナカイの背中乗るのを手伝ってくれました。
「さあ、このコートをあげる。あんたの着てきたコートとマフは、宿泊料ってことでもらっておくわ。
かわりに、手袋をあげる。」
ルフィはうれしくて、涙がこぼれてきました。
もうちょっとです。
もうちょっとで、ゾロに会えるのです。

「ほら、めそめそしないで。」
とナミは言いました。
「ここに、パンが2つと、ハムが1つあるわ。これだけあればお腹が空くことはないでしょう。」
とその2つをチョッパーの背中に結び付けました。
「さあ!行きなさい。だけど、背中のルフィが落ちないように気をつけるのよ。」
ルフィは、ナミに手を振って、さようなら、と言いました。
チョッパーは、薮や切り株を飛び越え、大きな森をつきぬけ、沼地や草原を横切って一生懸命、走りました。
オオカミが吠え、カラスが叫んでいます。
シュー、シューと空で音がしました。
まるで、何かが赤い炎をはいているように見えました。
「オーロラだぞ。」
と、チョッパーは言いました。
「すごく、光るだろう?」
それからも、チョッパーは夜となく、昼となく走りつづけました。
パンもみんな食べてしまい、ハムもなくなりました。
その時、ラプランドに着きました。





山賊の娘はナミ・・・。これもミスキャストですねえ・・・。

えっと、だんだん、書きたかったシーンが近づいてきてます・・物語もヤマ・・・。
もーちょい、おつきあいください・・・。

7.へ